2011年02月12日

分かりやすい清酒醸造学 №9 泡なし酵母って何?その1

-分かりやすい醸造学- №9 泡なし酵母って何? その1

◆ お酒づくりの小さな主役

 酵母が糖をアルコール発酵すると、(エチル)アルコールと同時に炭酸ガスが発生します。これは、ビール酵母でもワイン酵母でも同じです。ビールでは、あの爽快感とクリーミーなきめ細かい炭酸ガスの泡が命です。シャンペンでポーンと景気良く栓が飛ぶのも閉じこめられた炭酸ガスによるものです。でも、ビールでも、ワインでも発酵中のもろみでは、清酒もろみのように大量の泡は立ちません。今から40年ほど前に、島根県の※ある酒蔵で、泡の立たないもろみが見つかりました。蔵元にとっても初めての経験です。これは発酵していないに違いない。気味が悪い、『腐造?』と心配しましたが、不思議なことにやや香りは低いもののアルコールは充分出てお酒になり、一安心。しかし、「まてよ、これは面白いぞ」「何故だろう」が泡なし酵母の開発につながりました。これは、このなぜ?を解明し、今や酒造りの大半が泡を吹かないもろみになりました。「泡あり」「泡なし」について考察してみたいと思います。

※ある蔵元とは「簸上清酒合名会社」です。

◆ もろみの発酵の様子と泡の様子

 清酒もろみで、酵母がアルコール発酵を始めると炭酸ガスが出ます。そして、もろみの表面は泡立ち始めます。泡は日に日にどんどん増えますが、この過程を泡に注目して眺めると、筋泡(すじあわ)、水泡(石鹸泡)、岩泡、高泡、落ち泡、玉泡(大玉から小玉へ)、そして地へと変化し、やがて発酵は終了します。

 仕込みはじめて約20日~30日で発酵が終了します。その日数を「もろみ日数」といいます。お酒の裏ラベルにもろみ日数が記載してある酒もあります。

 この変化はどんなもろみでも大体同じような過程を経るので、分析法の未発達であった昔は発酵状態を知るよい指標になりました。しかし、発生する大量の泡のために、タンク容量の半分から3分の2ほどの量しか仕込めません。この分だけタンクの容量は無駄になります。それでも発酵の旺盛な時には、うっかりしていると泡が溢れてタンクの外へこぼれ出します。しかも清酒酵母は泡にたくさん付着していますので泡がこぼれるとその後の発酵が弱ってしまいます。ですから、泡消し役の不寝番をおいたり、泡消機を回し続けることも必要になります。大変な労働です。
(次回に続く)





Posted by たわらや at 07:07│Comments(0)
 
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